自治体・公共

愛媛県西予市

LGWAN メールとインターネットメールをシームレスに同期し、
柔軟な働き方の実現に向けて一歩前進

西予市

LGWAN メールとインターネットメールの同期環境をクラウド上に構築
職員の利便性向上とともにフレキシブルな働き方を実現

愛媛県西予市では早くからクラウド活用に取り組み、三層分離モデルにおいて多様な業務システムのインターネット接続系での利用を可能とする「β’ モデル」を推進してきました。そんな西予市が次のステップとして臨んだのが、LGWAN メールとインターネットメールのシームレスな利用をクラウド上で実現する同期環境の構築です。JBS をパートナーに選定し、Microsoft Exchange Online(以下、Exchange Online)とMicrosoft Defender for Office 365(以下、Defender for Office 365)を中心とした Microsoft 365 を最大限に活用することで、オンプレミス環境で運用してきた複数台のメールサーバーのクラウド移行ならびにメールアドレスの一元管理を実現しました。

愛媛県西予市

【自治体の概要】
自然、歴史、文化に出会えるまち

愛媛県の南西部に位置する西予市は、西は宇和海、東は四国カルストを擁する山地に囲まれ、臨海部から山間部までの標高 1,400メートルといった変化に富んだ地形を有し、市内全域が「四国西予ジオパーク」として日本ジオパークに認定されています。
県下でも広大な土地を有する西予市は、伝統的文化的特性から産業的な特性に至るまで、多彩な顔を持っており、各地域には歴史的建造物や古墳群など数多くの文化遺産のほか、民俗芸能や伝統行事が保存伝承されるなど、自然と文化が共存するまちです。

【導入の背景】
メール環境の分断により運用管理工数が増大し、職員の生産性にも影響がおよぶ

西予市 政策企画部 デジタル推進課 課長補佐 上甲 宏之 氏

西予市 政策企画部 デジタル推進課 課長補佐
上甲 宏之 氏

全国の自治体の情報システムは、マイナンバーや戸籍などの機微な個人情報を扱う「個人番号利用事務系」、各自治体ネットワークを相互に閉域網で接続した「LGWAN(総合行政ネットワーク)接続系」、そして「インターネット接続系」をそれぞれ切り離した形で利用する、いわゆる三層分離モデルに基づいて運用されています。2015年に起きた公的機関における情報漏えいインシデントの反省を踏まえ、セキュリティ強化を図ることを目的として導入されたものですが、一方でこのモデルは自治体職員の業務効率化の妨げとなっていました。

煩雑なメール操作は、その最たる例です。自治体間の連絡は LGWAN を経由したメールを利用し、外部の事業者や関係者とのやりとりはインターネットメールを利用するという使い分けを行わなければなりません。

この 2つのメール環境はドメインが異なるのは当然のこと、それぞれ独立したサーバーやセキュリティ対策を用意しなければならず、運用の複雑化も招いており、多くの自治体にとって重い負担となっていました。そうした中で全国の自治体に先駆け、この課題解決に果敢にチャレンジしたのが愛媛県西予市です。

早くからクラウド活用に取り組み、文書管理や人事給与、財務会計を含めた業務システムのインターネット接続系での端末利用を認めた総務省が提示した「β’ モデル」の利用を進めてきた西予市は、現在 DX 内製化に向けたロードマップ「VISION2027」を策定し、職員のよりフレキシブルな働き方やコラボレーション強化、事務処理の効率化などを目指しています。その一環として、LGWAN メールとインターネットメールのシームレスな活用を推進しています。

もっとも、これまでの取り組みには多くの困難もありました。西予市 政策企画部 デジタル推進課 課長補佐の上甲 宏之氏は、「LGWAN メールとインターネットメールを 1台の端末で同時に利用できる仕組みをオンプレミス環境に構築したのですが、メールサーバーは複数台にまたがっており、運用管理に多大な工数を費やしていました。また、職員にできる限り 2つのメールの違いを意識させないようにドメイン変換も行っていたのですが、例外処理も多いことから上手く機能せず、エラーを起こしてメールが送れないなど、クレームを受けることもありました」と話します。

【JBS 選定の経緯】
自治体 DX 包括支援サービスを通じて共に VISION2027 を策定してきた信頼を重視

西予市は上述のような課題を、いかなる方法で解決したのでしょうか。「ゼロトラストアーキテクチャを採用したフルクラウド化によって、LGWAN メールとインターネットメールをよりシンプルに同期することができる環境を実現したいと考えました」と上甲氏は語ります。

基盤として想定したのは、すでに導入していた Microsoft 365 ライセンスで利用できるクラウドベースのメールサービス「Exchange Online」と、サテライトオフィスを含めた多様な場所でメールを利用する職員に対してゼロトラストのセキュリティ対策を施す「Defender for Office 365」でした。そして西予市は、このメール同期環境の構築プロジェクトを共に進めていくパートナーとして JBS を選定しました。

「JBS には以前から庁内のさまざまな業務のデジタル化でお世話になっており、クラウド移行あるいはゼロトラスト移行ならびに Microsoft 365 の導入についても、JBS のサポートを受けながら進めてきた経緯があります。特に 2023年7月~9月にかけては自治体 DX 包括支援サービスを契約し、VISION2027 の策定に伴走していただきました。こうした関係性から JBS は自治体の業務や課題を深く熟知しています。私たちもまたマイクロソフト製品をはじめとする JBS の技術力に高い信頼を置いており、今回のプロジェクトでも引き続き JBS にサポートをいただくのが最適と判断しました」(上甲氏)

こうしてタッグを組むことになった JBS は、西予市に対して具体的にどのようなソリューションを提案したのでしょうか。JBS クラウドソリューション事業本部 モダンワークプレイス 1部 1グループの岡本 直樹は次のように説明します。

「LGWAN メールとインターネットメールをよりシンプルに同期することを要件とする西予市さまの構想を着実に実現するため、Exchange Online からデバイス管理ツールの Microsoft Intune まで、トータルな活用をサポートさせていただきました。そうした中で導き出した今回の提案の最大のポイントは、これまでオンプレミス環境の Active Directory で管理していたユーザーのアカウントを Microsoft Entra Connect を用いてクラウドの Microsoft Entra ID(以下、Entra ID)と同期させる点にあります。同時にデバイス管理の基盤もオンプレミス環境からクラウド側の Entra ID に移行することで、アカウントからデバイスまでクラウド上で一元管理できる体制の構築を目指しました」

【導入効果】
職員の利便性向上、メールボックス容量の大幅な拡大、セキュリティ強化を実現

LGWAN メールとインターネットメールの同期環境の構築プロジェクトは 2024年10 月にキックオフし、同年 12月に完了。そしてオンプレミス環境のメールサーバーから Exchange Online に運用を切り替えたのちに、2025年1月より本格的に運用を開始しました。このメール同期環境は、早くも多くの効果をもたらしています。

  • 職員の利便性向上、メールボックス容量の大幅な拡大、セキュリティ強化を実現

  • まずは職員の利便性向上です。LGWAN メールとインターネットメールのシームレスな同期が実現したことで、職員は従来のように 2つのメールを意識して使い分ける必要はなくなりました。
    さらにクラウドでメールアカウントを一元管理することにより、メールアドレスの追加や削除時に必要だった複数のサーバーへのログイン作業が不要になり、作業時間が大幅に短縮されました。(以前は 5分以上かかっていたが、現在はほぼ即時に完了可能)

    「加えて共有メールボックスの導入により、代表メールの確認が容易になり、複数の人が同時にアクセスできるようになりました。これにより、アカウント切り替えの手間が省かれ、業務効率が向上しました。つまり、すべてのメールがクラウド上で一元的に運用されているため、場所や時間にとらわれない職員の働き方を目指した ABW(Activity Based Working)を段階的に推進していくための基盤となっているのです」(上甲氏)

    インターネットメールの個人用メールボックスが、従来の 500MB から 100GB へと飛躍的に拡大したことも重要なポイントです。

    「メールボックスの容量制限によって重要メールが削除されてしまうのを避けるため、これまでは職員自身が個別にエクスポートして保存していました。また、メールボックスから削除されてしまったメールが必要になった際には、システム管理者に依頼してアーカイブから復元してもらわなければなりませんでした。こうした不便が完全に解消されています」(上甲氏)

    セキュリティ面では狙いどおり Defender for Office 365 が大きな効果を発揮しています。従来のインターネットメールのフィルタリング機能の精度が甘く、相当数のスパムメールが流入していましたが、現在はほぼ完全にブロックされています。

    「不審なメールを職員が随時判断して削除していた手間はなくなり、ひいてはフィッシングサイトに誘導されたり、マルウェアを含んだメールを開いたりしてしまうリスクが軽減されました」(上甲氏)

    システム運用管理の観点での効果として注目すべきは、サーバー台数の削減です。

    「これまで LGWAN メールを運用してきた複数台のサーバーを一挙にクラウドに移すことができ、オンプレミスに残ったのは管理用の 1台のみとなりました。これに伴い、サーバーの保守や更改に費やしていた工数とコストを大幅に削減できます」(上甲氏)

    また、Active Directory と Entra ID の連携によって、メールアドレスの管理にまつわる煩雑な作業も大きく改善できました。従前のようにメールサーバーにログインして職員のアカウントを個別に追加・変更・削除する必要はなく、Active Directory のみを修正すればその内容がメールの同期環境全体に反映されるようになりました。
    「これで人事異動や職員の入退職が集中する時期にも迅速な対応が可能となります。これらの改善により、業務全体の効率が向上し、職員がより集中して業務に取り組めるようになりました」(上甲氏)

    会議風景

    会議風景

    【今後の展望】
    Microsoft 365 のさらなる高度活用に臨み VISION2027 のロードマップを着実に進めていく

    集合写真

    ここまで紹介してきたとおり、西予市は LGWAN メールとインターネットメールの同期環境の構築を目指す中で Microsoft 365 を活用してきましたが、このプラットフォームのポテンシャルにはまだまだ大きな余地があります。

    「Microsoft 365 の多様なクラウドサービスには、私たちがまだ知らない機能の高度な使い方が存在しています。そうした機能を最大限に活用し、既存のシステムとも連携させることで、職員のさらなる生産性向上につなげていきます」(上甲氏)

    その先に見据えているのは、VISION2027 の今後のロードマップです。前述したとおり現在は職員のよりフレキシブルな働き方の実現やコラボレーション強化に向けて取り組んでいる過程にありますが、2026年のステージ3 では庁内事務の効率化、2027年のステージ4 ではアジャイルなアプリ基盤の構築と複雑な事務の効率化、以降のステージ5 では市民向けサービスの向上とそれを支えるバックエンドプロセスの変革、生成系 AI やクラウドネイティブなアプリ基盤の利活用を目標に掲げています。

    西予市は引き続き JBS との緊密なパートナーシップを生かしながら、このステップを着実に進めていく考えです。

    愛媛県西予市

    市長:管家 一夫
    市役所所在地:愛媛県西予市宇和町卯之町三丁目434番地1
    設置:2004年4月1日(東宇和郡の明浜町、宇和町、野村町、城川町、西宇和郡三瓶町の5町が合併して誕生)
    職員数:786名(2024年4月1日現在)
    概要:地方自治体

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