流通・サービス・公共・その他

西日本旅客鉄道株式会社

鉄道事業を取り巻く激しい環境変化に対応すべく
システム開発の内製化をトータルで推進

Microsoft Power Platform 内製化支援事例 西日本旅客鉄道株式会社

ノーコード/ローコードツールとして Power Platform(※)を活用し
現場改善に貢献する 2つのシステムの内製開発を短期間で完遂

西日本旅客鉄道(以下、JR西日本)はコロナ禍を経て激変した鉄道事業を取り巻く環境に対応するため、「顧客体験」「鉄道システム」「従業員体験」の再構築を軸としたデジタル戦略を推進しています。そうした中で目指したのが、これまで SI ベンダーに依存していたシステム開発の内製化への転換です。パートナーに選定した JBS のサポートを受けながら、2つのシステムの内製開発を短期間で完遂し、現場業務に工数削減やコスト削減の効果をもたらすことができました。この取り組みを通じて JR西日本は業務課題の深掘りから解決策の実装にいたる知識レベルの向上を図るとともに人材のすそ野を広げており、今後に向けてさらに多様なシステムの内製開発を加速していこうとしています。

  • Microsoft Power Platform のこと。以下、「Power Platform」

ノーコード/ローコードツールとして Power Platform(※)を活用し
現場改善に貢献する 2つのシステムの内製開発を短期間で完遂

西日本旅客鉄道(以下、JR西日本)はコロナ禍を経て激変した鉄道事業を取り巻く環境に対応するため、「顧客体験」「鉄道システム」「従業員体験」の再構築を軸としたデジタル戦略を推進しています。そうした中で目指したのが、これまで SI ベンダーに依存していたシステム開発の内製化への転換です。パートナーに選定した JBS のサポートを受けながら、2つのシステムの内製開発を短期間で完遂し、現場業務に工数削減やコスト削減の効果をもたらすことができました。この取り組みを通じて JR西日本は業務課題の深掘りから解決策の実装にいたる知識レベルの向上を図るとともに人材のすそ野を広げており、今後に向けてさらに多様なシステムの内製開発を加速していこうとしています。

  • Microsoft Power Platform のこと。以下、「Power Platform」
(左から)西日本旅客鉄道株式会社 鉄道本部 イノベーション本部 鉄道DX部 部長 真嵜 弘行 氏、鉄道DX部 堀 達広 氏、鉄道DX部 松宮 寛 氏、鉄道DX部 星野 恭弘 氏、鉄道DX部 担当課長 森 和彦 氏

(左から)西日本旅客鉄道株式会社 鉄道本部 イノベーション本部 鉄道DX部 部長 真嵜 弘行 氏、鉄道DX部 堀 達広 氏、鉄道DX部 松宮 寛 氏、鉄道DX部 星野 恭弘 氏、鉄道DX部 担当課長 森 和彦 氏

【会社概要】
「顧客体験」「鉄道システム」「従業員体験」の再構築を軸としたデジタル戦略を推進

JR西日本のビジョンについてご紹介ください。

コロナ禍の影響が長引き、苦しい状況が続きましたが、ここにきてようやく鉄道利用もかなりのレベルまで回復してきました。ただし、お客さまのライフスタイル・ワークスタイルの多様化や物価上昇など、当社の事業を取り巻く環境は大きく変化しており、まだまだ予断を許さない状況が続いています。

そうした中で JR西日本グループでは「長期ビジョン 2032」ならびに「中期経営計画 2025」のもと、「人、まち、社会のつながりを進化させ、心を動かす。未来を動かす。」という私たちの志(パーパス)を掲げ、人口減少や自然災害の激甚化、地球環境保全を含めたさまざまな社会課題に、高い生産性と新たな価値創出で対処していこうとしています。

デジタル戦略についてもお聞かせください。

前述したビジョンを実現するためにも、デジタルを中心とした新しい技術を積極的に取り入れ、活用していくことが必要です。当社では、2020年10月に「JR西日本グループデジタル戦略」を策定し、 「顧客体験」「鉄道システム」「従業員体験」の 3つを再構築することを軸に、JR西日本グループが持つ豊富で多彩なデータの利活用を進めるために必要な基盤や環境の整備に取り組んでいます。

【導入の背景】
時代に即したアプリケーションや IT サービスを提供していくアジリティを高めたい

システム開発の内製化に舵を切った理由を教えてください。

レガシー化したシステムをモダナイズしたい、あるいは無駄な機能を省いてスリム化したいといった観点から、以前からさまざまな業務システムの再構築を検討していましたが、それを実行できるのは、実質的に 5~10年サイクルで巡ってくるリプレイスのタイミングに限られていました。既存システムに途中で手を入れるためには当該ベンダーに依頼する必要があり、ちょっとした改変・改修にも多大なコストがかかってしまうためです。

そうした中で存在を知ったのが、世の中でも話題となっていたローコード/ノーコードツールです。当社としてもこの技術や手法を取り入れることで、時代に即したアプリケーションや IT サービスを、事業部門に提供するアジリティを高めたいと考えました。また、併せて注目したのがローコード/ノーコードツールの活用を高速化するためのシステム開発の内製化のアプローチです。

【Power Platform および JBS 選定の経緯】
内製化の取り組みを自立させるためのサポートが必要に

システム開発の内製化に取り組むにあたり、Power Platform を選んだのはどんな理由からですか。

西日本旅客鉄道株式会社 鉄道本部 イノベーション本部 鉄道DX部 部長 真嵜 弘行 氏

西日本旅客鉄道株式会社 鉄道本部 イノベーション本部 鉄道DX部 部長
真嵜 弘行 氏

当社は Microsoft 365 のアカウントを全社員に配布しています。単刀直入に述べると、このグループウェアの機能の 1つとして、すぐに利用できる環境にあったのが Power Platform でした。もちろん他社からもさまざまなノーコード/ローコードツールが提供されていることは知っていましたが、「まずは Power Platform でやってみて、もし不足を感じたならば、他社ツールも検討すればよい」と考え、追加費用もかからず軽い負担で始められることを優先しました。実は既に一部の社員は Power Platform で業務効率化を実現していたり、Power Platform 活用促進の社内コミュニティが発足していたりと、一定の環境が整っており、結果的にこの選択は当社にとって正解でした。

JBS をパートナーに選定した理由を教えてください。

Power Platform をベースにシステム開発の内製化に取り組むという基本方針は定まったものの、私たちにとって初めての試みであり、どこから、何から始めればよいのか見当がついていませんでした。特に既存システムの置換という領域にまで着手する構想を持っておりましたが、実現可能性については未知数でした。そこで Web を利用し、日本マイクロソフトとパートナーシップを結んでいるベンダーを調査したところ、多くの事例や技術力への高い評価で目に留まったのが JBS でした。

例えば Power Platform の利活用スキルについて、ハンズオン講習などの教育プログラムなどを提供しているベンダーは他にもありました。これらも私たちが習得しなければならないスキルの 1つであることは事実ですが、本当に期待していたのはそこではありません。

私たちが目指す内製化の取り組みを将来的に自立させるためには、事業部門が抱えている課題を深掘りし、それを解決するためには新たなシステムが必要なのか、それとも業務プロセスから変革する必要があるのかといった根本から見極めながら、グループ全体のデジタル戦略を主導していけるチームにならなければなりません。
実際に JBS とコンタクトをとったところ、そんな私たちの思いを 100% 汲み取ったサポートの提案を行っていただき、パートナーに選定しました。

西日本旅客鉄道株式会社 鉄道本部 イノベーション本部 鉄道DX部 担当課長 森 和彦 氏

西日本旅客鉄道株式会社 鉄道本部 イノベーション本部 鉄道DX部 担当課長
森 和彦 氏

【導入プロセス】
2つのシステムの内製開発を同時並行で推進

どんなシステムの内製開発に取り組んだのですか。

西日本旅客鉄道株式会社 鉄道本部 イノベーション本部 鉄道DX部 堀 達広 氏

西日本旅客鉄道株式会社 鉄道本部 イノベーション本部 鉄道DX部
堀 達広 氏

2023年2月頃からテーマ選定を開始し、その中から絞り込んだ 2つのシステムの内製開発を 7月から 9月にかけて同時並行で進めてきました。

1つは、積雪量報告アプリです。JR西日本のエリアには日本海側や中部地方を中心に豪雪地帯があり、冬季には鉄道運行に支障をきたす積雪量となることがあります。従来はそうした情報を主要各駅から Excel ファイルや電話で各エリアに設置している指令所で取りまとめた後に、FAX で関係各所に送付するなど、多大な手間と時間を費やしていました。本アプリはこの課題を解決するもので、スマートフォンやタブレットを活用することで迅速な情報収集を実現しました。

もう 1つは、社内向け運行情報提供アプリです。日々鉄道を運行している中では、先に述べた降雪や台風などの気象状況、災害、事故、設備の不具合、あるいはお客さまの救護対応などさまざまな要因によって遅延が発生する場合があります。この情報は各エリアに設置している指令所にリアルタイムに集められ、運行計画の変更指示やダイヤを早期に戻すための手配などを行っているのですが、社内の関係部署への連絡やお客さまへの情報提供については SI ベンダーで開発したシステムを利用して情報配信していました。そこで本システムは、社内の関係箇所向けの情報提供の仕組みを Microsoft Teams や Power Platform で作成したアプリに置換えてコスト削減を実現しました。

【導入効果】
内製化したシステムにより多大な工数削減やコスト削減の効果を得る

初めての内製化アプローチによって開発した 2つのシステムによってどんな効果を得られましたか。

積雪量報告アプリは、これまでシステム化できていなかった業務課題を初めて解決することができました。主要各駅の駅員や作業員が報告作業に費やしていた手間と時間の年間数百時間に相当する削減効果をもたらしています。

一方の社内向け運行情報アプリも、これまで SI ベンダーに頼ることでしか実現しなかった仕組みもスピード感をもって内製開発と可能であるという手応えを得たという意味で、大きな前進と捉えています。また本システムでも年間数千万円に及ぶコスト削減効果をもたらすことが期待されています。

JR西日本グループでは、「顧客体験」「鉄道システム」「従業員体験」の 3つの再構築を軸としたデジタル戦略を推進していることを先に述べましたが、今回内製開発した 2つのシステムは、その確かな第一歩とになったと手応えを感じています。

西日本旅客鉄道株式会社 鉄道本部 イノベーション本部 鉄道DX部 松宮 寛 氏

西日本旅客鉄道株式会社 鉄道本部 イノベーション本部 鉄道DX部
松宮 寛 氏

【今後の展望】
生成 AI を活用したシステム開発にもチャレンジ

今後に向けた計画や構想をお聞かせください。

西日本旅客鉄道株式会社 鉄道本部 イノベーション本部 鉄道DX部 星野 恭弘 氏

西日本旅客鉄道株式会社 鉄道本部 イノベーション本部 鉄道DX部
星野 恭弘 氏

内製化の取り組みを今回だけで終わらせたのでは意味がなく、今後も継続していかなければなりません。そのためにも既存システムの再構築や機能強化だけにとどまらず、これまでシステム化されていなかった業務領域の課題にも積極的に目を向け、スピード感を持って取り組んでいきたいと考えています。

また最近話題の生成 AI を活用すれば、自然言語ベースのプロンプト(指示)によってプログラムコードを生成できると聞き、高い関心を持っています。

JBS のアドバイスやサポートを受けながら、こうした新技術にもチャレンジしていくことで、より迅速かつ効率的なシステム開発の内製化を実現するとともに、そこに携わる人材のすそ野も広げていきたいと考えています。

【JBS への評価】
的確なアドバイスによりチームの知識レベルやスキルが向上

ここまでの取り組みを総括し、あらためて JBS の導入支援・サポート体制に対する評価をお聞かせください。

集合写真

今回内製した 2つのシステムの開発期間は実質 3か月という、当社では前例のないタイトなスケジュールで臨んだことから、本当に自分たちにできるのかという不安も当初はありました。しかし JBS のメンバーに伴走していただいたおかげで、しっかりやり遂げることができたと自負しています。

恥ずかしながらシステム内製化プロジェクト始動前は、システム開発に関するノウハウが全くなく、開発スケジュールの立て方や業務整理の方法すらわからない状態であり、明文化されたドキュメントもありませんでした。

そんな状況の中、JBS にはプロジェクトの全体像を把握いただいたうえで、計画立案やスケジュールの設定を行っていただくとともに、技術面、財務面、市場面、運用面などの観点から新規システムの開発が実現可能かどうかを検討するフィジビリティ調査、既存業務の洗い出しと業務フローの整理、そしてシステム開発の技術支援、内製文化の定着化を目指した伴走支援にいたるまで、一気通貫でご支援いただきました。

このようにトータルでのご支援により、開発プロジェクトの効率的な進め方についてスキルトランスファーが可能となりました。ゴールを見据えてどのようにスケジュールを立てるべきか、プロジェクトを進めるうえでどんな資料の作成が必要になるのかなど、JBS はプロジェクトマネージャーの立ち位置でアドバイスしてくれました。もちろん、当社と JBS メンバー混成の開発チームで進めたことで技術的なアドバイスだけでなく、アジャイル的な開発プロジェクトの進め方についても知見を得ることができました。

JBS の数々のサポートの中でも、特にありがたいと感じたのは毎日の「朝会」です。日々の進捗状況や問題点を JBS が確認し、的確なアドバイスをいただいたことで、課題の早期発見と解決につながりました。

このようにシステム開発だけにとどまらない JBS の貢献により、チームの知識レベルやスキルもめきめきと向上していき、自信をもって内製開発に取り組めるようになりました。こうして育成された人材は、今後さらに拡大していく内製開発で大きな役割を担っていくと確信しています。

引き続き JBS には、内製化に向けた私たちの成熟レベルに応じたサポートを期待しています。

JBS 担当者からのコメント

今回、業務整理~内製化支援というご支援の機会をいただき、伴走でプロジェクトの開始から完了まで対応できたことうれしく思います。特にアジャイル的にプロジェクトを進めるにあたってはコミュニケーションプランがプロジェクトを推進させていただくうえで肝になり、お客さまのご協力をいただきながら、期待値にお応えできたと考えております。内製化に関しては、今後も文化定着に向けて引き続きご支援をさせていただきたく存じます。

(左から)ソリューションスペシャリスト本部 SSP2部 LowCode課 佐藤 彩、ビジネスソリューション事業本部 Dynamicsプラットフォームソリューション部 CRMコンサルティング4グループ 布施 光、クラウドソリューション事業本部 西日本クラウドソリューション1部 2グループ 末竹 広光

(左から)ソリューションスペシャリスト本部 SSP2部 LowCode課 佐藤 彩、ビジネスソリューション事業本部 Dynamicsプラットフォームソリューション部 CRMコンサルティング4グループ 布施 光、クラウドソリューション事業本部 西日本クラウドソリューション1部 2グループ 末竹 広光

(左から)ビジネスソリューション事業本部 ビジネスアーキテクト部 八朔日 淳、西日本事業本部 第1営業部 1課林 晋佑

(左から)ビジネスソリューション事業本部 ビジネスアーキテクト部 八朔日 淳、西日本事業本部 第1営業部 1課 林 晋佑

西日本旅客鉄道株式会社

代表取締役社長 長谷川 一明
本社所在地:大阪市北区芝田二丁目4番24号
設立:1987年4月1日
資本金: 2261億3600万円
従業員数:44,897人(連結)、21,727人(単体)
事業概要:運輸業/流通業/不動産業/その他

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2024.06.06公開

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